いつもかわいいと好評頂いているアイキャッチ。ビジネスアカウントのメンバーに頼んで、ストーリーをつけてもらいました。
「ハヤトさん、見て! 海ですよ、海!」
「ああ、海だな。って、そんなに走って大丈夫か?」
「見て見て! 波の間で、光が、キラキラしてる! キレイ!」
「……やれやれ、聞いちゃいねーな。おい、奈津美、あんまりはしゃぎすぎんなよ!」
「大丈夫、だいじょー……ぶ……、はぁ、はぁ……」
「ほら、言わんこっちゃない。お前は人一倍、体弱いんだからさ。あまり無茶すんなよな」
「へ、へーき、です。これくらい。で、でも、ちょっとだけ、ひと休み」
「ああ、そうしろ……って、人によりかかってくんなよ」
「ふふふ。ハヤトさんの背中が、よりかかるのにちょうどいいんです」
「すぐそこにベンチあるじゃねーかよ……」
「ふふ」
「やれやれ……」
「…………ありがとうございます。ハヤトさん。海、見に連れて来てくれて」
「え? ああ、別に、大したことじゃねーよ。ここだって、お前んとこのお屋敷から、大した距離じゃないだろ」
「それでも、私ひとりじゃ、外に出してもらえないから。うち、過保護すぎて」
「奈津美は箱入りお嬢様だし、体弱いしな。しょーがねえさ」
「うちの親から睨まれても、めげずにハヤトさんがこうして連れ出してくれるおかげですよ。ありがとう」
「大したことじゃないって。オレ一人で海に来たって、空しいだけだしな」
「いつもこの季節は、暑くてすぐに倒れちゃうから、窓の外を見てばかりで。こうして海を見に来られるなんて、本当に夢みたい」
「こうやって少しずつ外に出て、体力をつけていきゃあ、いずれ一人でも好きに出歩けるようになるさ。そうすりゃ海に来るのだって、夢なんかじゃなくなるって」
「ふふ。そうですね。がんばります。でも……」
「……でも、なんだよ?」
「一人でここに来れるようになっても、ハヤトさんと一緒に来たいです」
「ん? そりゃまあ、一人よりは、友達と一緒がいいよなぁ、やっぱ」
「ううん。そうじゃなくて……私は、ハヤトさんと一緒に、キラキラ輝く海を眺めて、波の音を聴いて、潮風を浴びていたい。大好きな景色だからこそ、大切な人と一緒がいいんです」
「ばッ……! お前な、そういう恥ずかしいことを、サラッと言うんじゃねえよ!」
「…………? 私、何か変なこと、言いましたか?」
「……もういい! それより、落ち着いたんなら、そろそろ行こうぜ」
「んー……もうちょっと、このままで。まだ少し、心臓がドキドキしています」
「おいおい、大丈夫なのか? やっぱり少し、はしゃぎすぎて体に負担だったんじゃあ……」
「………………はぁ」
「…………何だよ、俺、何か変なこと言ったか?」
身体の弱いお嬢様。
ハヤトとは同い年だが、病弱のため度々休んでおり、留年している。
見た目は派手なので誤解されやすいが、面倒見の良い性格。
奈津美とは1年生の時のクラスメートで友達(のつもり)。