音楽と向き合ってみる[4]:続・ベストなヘッドフォンを探す

前回の続きです。外で音楽を聴くためにマイベストなヘッドフォンを選んでみようと思いますが、その前に選択基準について少し語ってみます。

ハイファイを目指すのか、味を求めるのか

音楽を趣味で語るとき、音の善し悪しよりも好みに合っているかどうかが重要と考えます。特に、スピーカーに関しては、無振動を目指す設計もあれば、積極的に共振させる設計のものもあります。小型スピーカーの多くは、低音不足を補うため、共振を積極的に利用しようとしますから、そうなるとユニットの性能だけでなく、それを収めているエンクロージャーも含めて最終的な音質が決定されます。箱の設計や、形状、素材なども絡み、もう楽器と同じように個性があるものと考えられますね。
最終的に音が耳に届くまでは、おおざっぱに、入力するプレイヤーがあり、増幅するアンプがあり、出力するスピーカーがあり、最終的には部屋の壁による反響まで関わってきます。実際にはもっと細かいコンポーネントの組み合わせがあります。すべてが個性的だと、個性+個性+個性で何がなにやらわからなくなってしまいますね。

そうすると、一番音に個性が出やすいスピーカーに好みのものを選ぶとして、その他は忠実度の高いものを選ぶというのが、ひとつの目安になります。この忠実度の高さを表す言葉がHi-Fidirity、つまりHi-Fiという言葉です。いわゆるWi-FiもHi-Fiをもじった言葉であると思われます。

この、Hi-Fiであること、すなわち原音に忠実であることを最良とするのであれば、レコーディングエンジニアが聞いた音にどれだけ近づけるかが目標になります。そうすると、スピーカーはいわゆるスタジオモニター系のもの。最近の事情はわかりませんが、昔はYAMAHAのNS-10M(意外と低価格です)あたりが定番でした。部屋はできるだけ余分な反響の無い方が望ましく、正三角形の頂点に座って聞けるような環境が必要になってきます。最初に趣味と断ったように、音響を職業とするのであれば、そういう追求は必要ですが、趣味では限界がありますね。
しかも、Hi-Fiを追求しすぎた結果、味気の無い音になったりするので、ひたすらHi-Fiを求めるのではなく、味を許容するバランス感覚が楽しみだと思います。

結局何が言いたいかというと、Hi-Fiが必ずベストな選択ではなく、最終的に耳に届く音が気に入っていれば、それでいいということですね。

聴感上の不快感は音の歪みによる

Hi-Fiを語りだすと、一般の人間の耳ではわからず、測定器まで必要な要素が含まれてきますので、ますます趣味とかけ離れてくると考えます。一般人の耳でわかりやすいのは、音の歪みであったり、ごく小さい歪み=濁りのようなものです。いわゆる、大音量で再生した時に音が割れることは、多くの人が経験あると思います。
音割れまでいかなくても、少量の歪みであったり、ごく僅かな濁りのようなものは、意外と無意識に認識していて、なんとなく不快であったり、気持ちよくないと感じたりするものです。濁りの無い再生音は、クリアーであると感じ、爽快感や気持ちよさを伴います。これは長く聴いていると感覚としてはわかるものの、短期間の聴きくらべレベルでは、なかなかわからなかったりします。

すぐ聴いてわかるほど歪んでるのは論外として、なんとなく音が濁っているような機材を選ばないためには、ズバリ大音量で視聴してみるに尽きます。

スピーカーにしてもヘッドフォンにしても、大音量を入力すれば音が割れるのは当たり前なのですが、実際に普段聴かないような大音量でも歪みが少ないものは、普段聴く小音量でも、それだけ余裕があってクリアーであると判断できます。反対に、少し音量を上げただけで音が割れてしまうものは、普段聴く音量でも不快な歪みがあると考えられるわけです。
車のエンジンに、普段使わない回転域での安定性(=余裕)を求めるのと似てますね。

スピーカーにしてもアンプにしても、大音量で性能がいいということは、小音量の性能がより高いということです。購入前の聴きくらべの段階では、普段聴かないような大音量での聴き比べを、ぜひやってみてください。
私がJBLのスピーカーやゼンハイザーのヘッドフォンを安心してお薦めするのは、大音量時の歪みがハッキリわかるくらい少ないからなんです。(もちろん味は別にした話です)

余談ですが、味で言うとInfinityのInfiniTesimalというミニスピーカーが、いつかは手に入れたいと憧れていたのですが、結局手に入れられずじまいでした。

ヘッドフォン評価の続き

さて、ヘッドフォン視聴の続きにはいります。以前の記事が未読の方は、こちらも参考にしてください。

 

EARIN

クラウドファンディングに登場し、製品化された左右ワイヤレスで耳栓なみに小さいイアフォンです。現在も、クラウドファンディングなどで他にも同様のコンセプトのイアフォンがあるようですが、その先駆け的な商品と言えるでしょう。

左右ワイヤレスのイアフォンは低価格品にもありますが、EARINはそれらと比べると圧倒的に小さいです。接続はBlurtoothですが、通話機能はありませんのでスマートフォンと組み合わせるのは注意が必要です。スマートフォンとはL側のユニットをペアリングし、L側のユニットからR側のユニットへ無線で伝送されます。遅延や劣化がないか、気になるところですね。

ネットでのレビューをみると、R側の音が途切れるという報告は一定数以上あり、それが気になるという人と、気にならない人がいるようです。
で、実際に聴いてみると、私としては許容できないというのが、正直なところでした。

L側のユニットだけ使って、モノラルイヤホンとして使うこともでき、それでもこの小ささは充分魅力的ではありますが、価格を考えると納得できる使い方とは言えませんね。

実際の音途切れですが、3~5分に1回。つまり1曲聴いていると1回以上は遭遇する印象です。途切れ方はプツッと切れるというより、フッと小さくなって、またすぐに復帰するような感じです。
環境にも左右されるとは思いますが、視聴はユニットから機器までの距離が70cmくらいで、椅子にすわった状態で静止しておこないました。

私は、音の定位には結構こだわる方で、そういう意味では頭の中央に定位するヘッドフォンより、前方に定位するスピーカーの方が好きです。つまり、ヘッドフォンで聴く時点で、定位感についてははある程度割り切って諦めているのですが、それでも中央に定位していたものが、左に大きく移動してまた戻る感覚はなかなかのストレスで残念でした。

人間の体は基本的に電波を通しにくいものですし、左耳から右耳にBlurtoothの電波を貫通させるのが、技術的にたいへんということでしょうね。あまり電波の出力をあげすぎるのも、気持ち悪いと考える人もいるでしょう。

R側の途切れを差し引いて評価すると、音質はなかなか素直で癖のないものです。音量はあまり上げられませんでしたが、それはユニット小型化の代償でしょう。高価格であるせいか、コンプライ(低反発素材)のイヤーチップが付属していましたので、それを使いました。装着感や安定感は申し分ありません。外に出歩いても落ちそうな不安感はあまりないです。(が、実際に落としたらショックでしょうね…)

価格は高めですが、本体や充電ケースの高級感は申し分ありません。このジャンルの商品としては、今後に期待といったところです。

 

Jabra ROX

スポーツタイプのヘッドフォンによくあるスタイルで、ユニットとユニットをつなぐケーブルにはリモコンのみついており、バッテリーなどはユニット部分に収まっています。ケーブルのとりまわしが邪魔になりにくいのが魅力ですね。

ギミックとしては、左右のユニットにマグネットが内蔵されており、くっつけることで電源がオフになります。スマートフォンの音楽プレイヤーは、Bluetoothのヘッドセットが切断されると、自動的に一時停止になるものが多いので、このギミックはなかなか便利です。
充電は、L側ユニットのカバー外すと現れるmicro USB端子で行います。
リモコンとマイクがついており、着信や通話ができる点も(機能としては当たり前ですが)便利です。ユニットは少し大柄で重い印象ですが、私の場合は慣れれば許容範囲と感じました。

総合的な使い勝手は〇です。

専用アプリで音質の調整ができるようですが、今回は使わずに視聴しました。

音質はやや低音が強調されており、全体的に硬質な印象でしょうか。エレキギターの音色が綺麗に聴こえる割には、ボーカルがあまり気持ちよくないと感じたのが正直な印象です。辛口に言うと、楽器の分離がはっきりせず、ガチャガチャとうるさい感じです。スポーツ向けと謳われている商品ですし、他のヘッドホンより音量はあげられるので、屋外で騒音のある場所でも、何より迫力優先で音楽を聴きたい人向きなのかもしれませんね。

ベストではありませんが、使い勝手優先なら悪くないチョイスだと思いました。

(次回へ続く)

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