いつもかわいいと好評頂いているアイキャッチ。ビジネスアカウントのメンバーに頼んで、ストーリーをつけてもらいました。
「ここに居たのか。絵海梨。いきなりはぐれるなよな」
「別に航太君と見学してたわけじゃないのに…。一人にしてほしいな」
「団体行動してる時くらい周囲に合わせようぜ。お~でかい船!」
「でかい船、じゃなくて氷川丸よ。パンフレットくらい読みなさいよね」
「名前くらい知ってる。だって船体にも書いてんじゃん」
「じゃあ、どんな船か知ってるの?」
「貨客船だろ。当時の著名人を乗せて運んだんだ」
「それだけじゃなくって、この船は、戦中と戦後、多くの人の命を救ったの」
「世界の海を旅して友だちたくさん作れたら楽しいだろうな!」
「聞いてないし」
「来る前に知識は仕入れてるよ。ったくノリ悪いな」
「じゃあ話しかけないでよ。私、あなたとは友だちじゃないんだから」
「入学当時に友だちになろうって声かけたら断られてそれっきりだよな」
「だって、挨拶もなしに『今、時間ある?』なんて迫ってこられたら怖いわよ」
「趣味が合いそうな子を見つけてさくっと友だちになっておきたかったんだよ」
「さくっと?ノリが軽すぎるわ。こっちは数だけの友だちなんていらないの」
「価値観の相違ってやつだな」
「誰にだって、大事にしてる物はあるの。世界中の人と友だちになりたいなら、文化とか歴史を少しは勉強して相手を知ろうとしなくては。ノリだけで踏みこむとお互い傷つくかもしれないよ」
「うんうん。絵海梨は俺を友だちだと思って心配してくれてるんだな。照れ隠しか!」
「ばっ…違うよ!?航太君があんまり軽率だから注意しただけじゃない」
「うん。俺の友だちにそこまで慎重なやつ一人も居ない。だから、絵海梨と話がしたくなるんじゃないか」
「褒めてもお菓子くらいしかあげないわよ?」
「はは。今日もあの日と同じだな。まるでペアルックだ」
「はっ?お店の新作が好みだったから買っただけよ。航太君に合わせたわけじゃないからね!」
「絵海梨は海が好きだもんな。俺はマリン系のグッズ全部好き。俺たち本当に気が合いそうだな」
「私のこと、なんにも知らないくせに」
「そりゃあ、知ろうとしなきゃわかんないさ。絵海梨がさっき自分でそう言った」
「誰がうまいことを言えと」
「入学して二年目だし、そろそろ友だちにしてくれない?俺のこと、まだ知らない人にしておくの?」
「私、すごい考え方が堅苦しいって言われるんだけど。いいの?」
「いいよ!だって、友だちだぜ?…おや、ひょっとして親友とか恋人と勘違いしてる?いや~そこまでの覚悟で言ってくれるならドキドキしちゃうね!」
「ばっ…そんなんじゃないから!友だちになったら電話もするし、メールもじゃんじゃん送るけど迷惑じゃないかってそれだけだから!」
「あはは。いいよいいよ。面倒臭かったらスルーするから」
「なにそれ!ひどいっ」
「少しずつ慣れていって距離を寄せていけばいいじゃん。まずは、友だちから」
「そうだね」
「じゃあ…。今、時間ある?」
海が大好き。
若い割に考え方がかたいと周囲によく言われる。
航太とはよくしゃべるけど、友だちではない。
海にちなんだグッズを集めるのが趣味。
見た目で思慮深そうと言われるが、実際は脳天気。
絵海梨とは入学当時に出逢って以来の友だち・と自分で思っている。