いつもかわいいと好評頂いているアイキャッチ。ビジネスアカウントのメンバーに頼んで、ストーリーをつけてもらいました。
ノリくん。この間、貸した本を返してくれないかな。
本なんて、泉に借りたっけ?
2ヶ月くらい前に、マンガやラノベの6巻だけ30冊。
新しいのは泉のだったか。あ~返さないといけないね。
他にも6だけ集めてたの?
うん。ほとんどは古本屋で6巻だけ買ったんだけど、最近の本も入れたくて。
新刊が出たから返してよ。シリーズ物だから前の巻から読みたいの。
明日じゃだめ?今日いっぱいは必要なんだけど。
いやよ。全巻並べて背表紙を眺めながら愉悦に浸るんだから。
愉悦って…ま、それなら仕方ないな。少し遠いけど、ついて来て。
遠い?一応、念の為に聞くけど、翔栄町の中よね?
秘密。途中から足元が舗装されてないから、気をつけて。
あ、待って!
その辺、木の根が横に張ってるから気をつけ…おそかったか。
うぅ、つま先引っ掛けた。怪我はしてないわ。森の中に私の本があるなんて冗談でしょ。
この先の木造家屋に本が集まってる。ハロウィンのお化け屋敷やるのに、6がついた飾りが必要だったんだ。
6は西洋で不吉な数字だったよね。
うん。俺の発案で6巻だけの本棚で六畳間の壁を埋め尽くしてる。誰も怖がってくれないから失敗した。
私は怖いわよ。1巻から読めない本ばっかり並んでる部屋なんてストレスが溜まりそう。
なるほど。マニア向けの部屋だったか。
私の本を飾りに使ってたのはわかったけど、こんな森の中でイベントやらなくてもいいじゃない。
もうじき木造家屋を取り壊すんだってさ。家主が利便性の高い住宅街に転居して、管理する人いないから。
そうなんだ。最後の記念にイベント会場として貸してくれたのね。
家自体が古くて大勢詰めかけても危険だし、イベントは宣伝してなかったんだよ。大掛かりな仕掛けもしないし。
普通の家でお化け屋敷やっても、怖くもなんともなさそう。
大黒柱が傷んでて、誰かが歩くたびに家が軋むよ。隙間風もひどいし。
探索してる間に屋根が落ちてきたら、別の意味で怖いね。家主さん、よく暮らしていられたね。
ご先祖様が話しかけてくるから、楽しかったらしいよ。
幻覚と話すほど孤独だったんじゃない。可哀想に…。なんだか肌寒いし、薄暗くなってきたね。
ああ、暗くなるね。家主さんに出入りは午後6時までって言われてるから急がないと。
あ、わかった。家主さんが引っ越したから、電気が点かないのね。
誰もいないはずの家なのに、玄関が閉まっちゃうんだよね。
誰かのいたずらじゃないの?
ご先祖様は生きてた頃から門限にうるさかったらしいよ。
ええっ!?ご先祖様って、本当に出てくるの!?
俺は会ったことはないけど、歩きまわる音を聞いたことあるスタッフもいるんだな。
本物の幽霊屋敷じゃない!
ま、朝には出られるよ。外は暗いから危ないよって親切心じゃないかな。
何を呑気な!そんなところに私の本があるなんていやよ。早く取り返さないと!
前置きはこの辺にして、ここからが大事な話だけど聞く?
な、何よ。もっとすごい話が隠されてるの?
俺、あんまりウケが悪いから部屋の模様替えしようとしたんだよ。でも本棚から本が抜けないんだ。
それ、本棚に詰め込み過ぎたんじゃないの?
特定の本だけ固定されたみたいにびくともしない、なんておかしいよ。
抜けないのは私の本だけとか言わないよね。
新しい本だから泉のかな。どうやら気に入っちゃったみたいだね。
そんなこと誰が…この流れだと、ご先祖様なのね。
さぁ?持ち主が返してと言ったら素直に聞いてくれるかなと、連れてきた次第。
何でこんな目に遭うのよ!主催者に文句言ってやるわ!
主催者は誰なんだろう。俺、実はその人と面識ないんだよね。他のメンバーも口コミで集まった人ばかりだし。
責任者不明って怖すぎ!怪しすぎ!
それで、本どうする?ちゃんと言えばわかってくれるよ。
そんなに気に入ったらあげるわよ。何かとり憑いてたらいやすぎ。
ハロウィンだし、お菓子あげればいたずらしないよ。
ついでに前後の巻も持って来いなんて言われたら面倒くさいわ。