アイキャッチ物語 #12「金魚すくい。コツは勢いとタイミング」

いつもかわいいと好評頂いているアイキャッチ。ビジネスアカウントのメンバーに頼んで、ストーリーをつけてもらいました。


「はぁ。金魚ちっとも獲れない…。チケも残り少ないしどうしよう」

「君、どうした?」

「えっ。わ、私ですか」

「急に話しかけて驚いたか。コツを知りたいなら鳥居の前に集まってる連中に聞くのもいいぞ」

「人が大勢集まってる場所は気を使うので行きたくないです」

「雑談するだけなのに気を使う?君は面白いこと言うな」

「みんなと仲良く、小学校の頃よく言われませんでした?だから苦手な人や意地悪な人とも仲良くしようとして…疲れちゃ
いました」

「あ~真面目にやって無理しちゃったタイプか。子どもは素直だもんなぁ」

「大勢の中に混じると、うっかり八方美人が出ちゃうんですよ。誰にでも親切に、誰にでも優しくしないといけない気がし
ちゃう」

「ここは誰かと喋りたくて集まって、他のことがやりたくなったら移動する。結構あっさりしたもんだよ」

「みんなと仲良くする必要は無いのですか?」

「仲良くならなくてもいいが、いじめはだめだ。自分が相手を好きになれないからっていじめていい理由にはならない」

「いじめって、無くなんないですよね。みんながお互いを理解して好きになれば無くなるって大人は言うけど…」

「近づきすぎると少しのズレが許せなくなるもんさ。仲が良くても距離を保つのが大事なんじゃないかな」

「私、ここでは友だち作るの避けてきたんですよ」

「おや。では、俺で良ければ友だちになるか?2年の頼っていうんだ」

「頼先輩ですね。私は1年生の瑞穂です」

「俺のように友だちが多くても単独行動を楽しむやつも居る。だが、一人を好むと独りぼっちは違うからな」

「いつか、おしゃべりに混ざってみようかな」

「今日のところは俺が手伝ってやろう。何を獲りたいんだ?」

「いいんですか?じゃあ、そこの地金獲ってください!」

「地金…?それ、どれのこと?俺あんまり詳しくないんだ」

「体型は和金で、楫鰭以外の鰭と口の周りは赤く、それ以外が白い独特の体色を持つ金魚です。愛知県の天然記念物なんですよ!」

「あ~胴体が白くて背びれとか赤いやつね。…何故屋台の水槽で天然記念物が泳いでいるのだ。えいっ」

「あっ!逃げられた!」

「そこの赤いやつじゃだめか?」

「リュウキンは可愛いけど、地金がいいのです」

「ふむ、あれはリュウキンと言うのか。…何故この学園には妙にマニアックな知識の人間が集まるのだろうか」

「え?」

「君は大丈夫そうだ。この学園で十分うまくやっていける素質を感じた」

「ほんとですか。先輩に言ってもらえると自信がつきます」

「よし、次は慎重に行くぞ。ぽいが破れかけてきた」

「がんばってください!」

「よし、行くぞ…。そいっ」

「…なんですか。そのかけ声」

「ちゃんと獲れたんだ。気にするな」

「あは。ありがとうございます。…あれ?いつの間にかギャラリーが…。先輩が破れかけのぽいで地金をすくうの見てたんですね」

「こんなたくさんの人に囲まれて、良かったな」

「良かった?なんでです?」

「今からおしゃべりの練習ができるじゃないか」

「心の準備ができてませんよっ」

「俺のように、勢いで友だち作ってみろよ」

「え~~~!?」


瑞穂

瑞穂   翔愛学園高等部 1年生

子供の頃に誰とでも友だちになろうとがんばりすぎて、今は人見知り。
たくさん人が集まっている場所を避ける傾向がある。
 頼

頼   翔愛学園高等部 2年生

友だちは多数居るけど、基本的に単独行動を好む。
割りと世話好き。

文章:望月明音(ビジネスアカウント)
背景:ゴルさん(ビジネスアカウント)

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