アイキャッチ物語 #38「沈む夕陽 ふたりで見てた」

いつもかわいいと好評頂いているアイキャッチ。ビジネスアカウントのメンバーに頼んで、ストーリーをつけてもらいました。

 

 

夕暮れがずいぶん長いなぁ。これだけ作業したのに、まだ夜にならない。

翔愛祭用の小道具、たくさん完成したね。脚本も書いて小道具製作までこなして、すごいね!

誰かしらないけど、手伝ってくれてありがとう。体がすごいだるいけど、がんばるぞ~。

太陽が沈まないようにしてるから時間はたっぷりあるよ。

え、君が夕陽を操ってんの?ちょっと信じられないなぁ。

私にはハルキの願いを叶える能力があるんだよ。

へぇ?他校の生徒はそんなこともできるのか。すごいな。

君だって私と同じ学校の生徒だったくせに。覚えてないの?

あっ!いつの間に着替えてたんだろう!?

君、翔愛に転校して忘れちゃったんだね。私のことも、全部。

いや待って?俺、君と面識あったっけ?確か…翔愛には親の都合で転校してきて…あれ?前どこにいたっけ。

ほら、覚えてないね。私の名前だって、わかんないでしょ。

君の顔は見覚えある気がするのに、名前が出てこないや。俺ら、最近も会ったよね?

うん。ハルキの後を追って転校してきたからね。隣のクラスにずっといるよ。

廊下ですれ違ったのか!なるほど。でも、なんで俺の後なんか追ってきたの?

さぁね。なんでそんな気になったのか、君が忘れちゃったんなら言わないよ。

君の名前はわからないけど、君は「ボク」って言う人だった。それは思い出した。

そう。前の学校では「ボク」って言ってたよ。君の中にボクのかけらが残ってるんだね。嬉しいよ。

でも超能力を持った知り合いに心当たりは無いかなぁ。

団地の公園で決めた設定だよ。ボクの名前にちなんだ能力を持ってるって。

設定…ああ、そうだ。俺たちがふたりきりの公園で考えたんだった。

ボクたちはどっちも親が一人だったからね。しょうがないよ。

誰もいない家には帰りたくない。だから夜が来ないことにした。ずっと遊んでいられるように。

うん。君は寂しい過去なんて忘れようとするけど、ボクは君がいなきゃひとりぼっち。

追ってこなくてもいいのに。夕映。

名前、思い出してくれたんだね。

うん。夕映は夕方を支配する能力って設定だったもんな。

じゃあ、そろそろ目を開けてボクを見つけてよ。

へ?

君、うなされて寝言を言ってるから、ボクが話相手になってるんだよ。

なんだと。

劇の脚本、まだなんでしょ?図書室で寝てる場合じゃないよ。

そういう時は起こせよ。

やだよ。ボクを忘れてた罰さ。いい話になりそうかい?

 


夕映

夕映(ゆえ) 翔愛学園高等部2年生

一人称は「ボク」の女の子。ハルキを追って翔愛学園に転校してきてから「私」と言うようになった。
ハルキの幼なじみだが、ハルキは全く覚えていないらしい。

 ハルキ

ハルキ 翔愛学園高等部2年生

親の都合で1年の秋に転校してきた。新しい暮らしにすっかり慣れて、昔のことは忘れた。
学園祭の演劇の台本づくりを担当している。夢のなかではとっくに完成して小道具まで作ってる。

 

 

 

文章:望月明音(ビジネスアカウント)
背景:ゴルさん(ビジネスアカウント)

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