前回は、とりとめのない話になってしまい、すみませんでした。過去の話を書き出すとキリがないですね。
今回から反省を込めつつ、テーマを絞った話題にしていきましょう。
実は、一眼レフのスチルカメラを購入する前、コンパクトカメラなどとは全く縁が無かったのですが、ビデオカメラに興味をもった時代はありました。ハイテク好きな少年としては、どうしても静止画=時代遅れ、動画=新しい技術。という思い込みもありました。
しかし、TV放送を含めビデオの映像やコンパクトカメラの映像と、一眼レフカメラの写真に決定的な違いがあります。
前回「それっぽい写真」と一言で片づけてしまいましたそれは、より正確に説明するなら「被写界深度の浅い写真」のことになります。
被写界深度とは
ご存じの方にとっては説明するまでもないのですが、被写界深度について簡単に書いておきます。
被写界深度とはズバリ、ピントの合う範囲の広さのことで、被写界深度が浅いとはピントの合う範囲が狭いことになります。
オートであれマニュアルであれ、レンズで写真を撮るためには、写したいものにピントを合わせなければなりません。例えば、10m先に被写体があるならば、レンズのピントリングを回して、10m先にピントが合うように調整しなければならないのですが、被写界深度が前後に1mあれば、9m~11mまでピントが合う理屈です。
これが、前後に10cmしかなければ、9m90cm~10m10cmの間にしかピントが合わず、よりシビアなフォーカス調整が必要になります。このピントが合う奥行き方向の距離を被写界深度と言い、範囲が狭いことを「浅い」。範囲が広いことを「深い」と表現します。
ZEISSのBatis 2/25レンズ。有機ELディスプレイに被写界深度が表示される。
風景写真のように、近くにあるものから遠くにあるものまでハッキリ写したい場合は、被写界深度が深くなるように意識します。このようなケースでは、実はスマホのカメラと一眼レフの写りに大差はありません。
一方、写したいもの=被写体がハッキリしている場合は、その被写体の範囲のみにピントを合わせ、それ以外の背景は被写界深度から外れるようにして、意図的にピントをぼかすことで、主要被写体を浮かび上がらせることができます。
マクロ写真などで、花にピントがあっていて、背景がボケた写真をよく見かけることがあるでしょう。
また、ポートレートなど女性を撮る場合には、瞳やマツ毛にピントを合わせて目を印象付けておき、極端に浅い被写界深度で肌のデコボコもぼかしてしまう、みたいなこともあります。
被写界深度の浅い写真には、大型センサーと明るいレンズが不可欠
私が一眼レフの魅力にはまったのは、主要被写体をクッキリ浮かび上がらせて背景をフワリとボカす、浅い被写界深度を利用した絵づくりにはまったからなのですが、そのためにはいくつかの条件があります。
それは大型センサーと明るいレンズに尽きるわけですが、いわゆるフィルム時代の35mmカメラ。そして、今はフルサイズセンサーと呼ばれる35mmフィルムと同サイズのセンサーがひとつの目安になります。フィルム時代から中判や大判と呼ばれる35mmより大きなフィルムもありましたし、デジタルカメラにも中判サイズのものもありますが、それらは特殊なものでアマチュアがおいそれと手を出すような価格帯でもありません。
レンズは、f1.4クラスの明るい単焦点レンズが欲しくなりますが、レンズの明るさを補うために、より倍率の高いレンズを使ったり、マクロレンズを使って被写体に近寄ることでも、被写界深度の浅い写真が撮れます。
私が最初に買った安価なダブルズームキットで300mm f5.6というスペックであっても、明るい昼間で絞りが開放になり、望遠側の300mmを使いつつ、被写体までの距離が比較的近ければ、一眼レフっぽい写真が撮れたわけです。
もちろん、こだわりだすといろいろとつっこみどころはあるのですが、そこは初心者ということで笑って許しましょう(笑)
余談ですが、たまにスマホやコンパクトデジカメで「f2.0の明るいレンズ」というようなウリ文句をみかけます。もちろん他機種よりは明るいんでしょうけど、35mmサイズのf2.0とは全然明るさが違います。たまに、f2.0という数値だけをみて、一眼レフ並と言う評論家がいますが、同じような明るさや同じような被写界深度の写真が撮れるわけではありません。比較するなら、きちんと35mm換算でf値がいくつという表記をしてもらいたいものです。
初めて買った明るいズームレンズ
かつての私もだんだんと写真のことがわかってくると、より明るいレンズが欲しくなりました。ただ、画に対するこだわりよりも、機能面に魅力を感じることが多く、欲しいレンズはズーム中心。単焦点レンズに手を出すのはずいぶん先になります。
私がダブルズームキットの次に買ったのは、MinoltaのAF APO TELE Zoom 80-200mm f2.8というレンズです。確か当時のお値段が19万円以上というカメラメーカー純正ならではの高価なレンズです。
その後に登場したHighspeedタイプの白いレンズではなく、黒い鏡筒のずっしり重いレンズでした。
80mm-200mmというのは、そこそこ使いやすい倍率ですし、全域でf2.8という明るさといい、Minoltaならではの綺麗なボケ具合といい、とても価値があるレンズだと思っています。
ただ、α-8700iという比較的コンパクトなボディに、このレンズを付けて、違和感なく使っていたはずなのに、デジタル時代になってみるとレンズが重すぎて使い勝手が悪いという事態となり、既に手放してしまいました。ちなみに、カメラ本体より高いレンズと聞くとびっくりしがちですが、新型がでると一気に価値が下がるボディと違って、良いレンズは長く使えて価値が下がらないので、何年か経ってからも結構いい値段で買い取ってもらえたりします。
当時の写真が残ってないかな…と思って探したところ、Photo CD(という今は亡きKodakの規格)で、少し残っていました。
スキャンの解像度は高くありませんが、なかなかいい金属の質感が出ていますね。