先日、Twitterのタイムラインに、YOMIURI ONLINEの、「孤立した少女を支援する仁藤夢乃さんインタビュー」という記事が流れてきました。ちょうど児童虐待に関して調べており、興味深かったので本人が執筆された本を購入しました。
元の記事を読む
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170310-OYTET50012/#csidx7980260d02a30e58916400a46be907a
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【略歴】仁藤夢乃(にとう・ゆめの) 一般社団法人Colabo代表
1989年、東京都生まれ。中学生の頃から東京・渋谷の路上をさまよう生活を始め、高校2年で中退。高卒認定の予備校での一人の講師との出会いをきっかけに、ボランティア活動を始め、明治学院大学に入学。東日本大震災の被災地支援活動を経て、家族や学校とのつながりを絶たれた若者の居場所作りをするColaboを設立。支援している少女たちが買春に至った背景や思いを文章と写真で訴える「私たちは『買われた』展」(2016年8月~)は全国を巡回し、大きな反響を呼んでいる。著書に『難民高校生』(ちくま文庫)、『女子高生の裏社会―「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)がある。
『難民高校生—-絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』 は、仁藤夢乃さんの「居場所」がなかった中高生時代から始まり、高校中退し、高卒認定をとるための予備校で参加したゼミ(任意の課外活動)を通じて「居場所」を見つけ、やがて被災地支援などで若者の「居場所作り」を始めるに至る回想録になっています。
私自身、子ども時代を両親のネグレクトで育ち、6年間のキャラフレ運営でも「居場所作り」にこだわってきました。そんな私の心に響く内容がたくさん書かれている本でした。
例えば、いじめなどの問題が起こった時の対処法として、「親や先生など身近な大人に相談するように」といったことが必ず言われます。でも、それはそんなに簡単にはできることではありません。その理由がこんな気持ちとして的確に述べられていました。
高校生にとって、学校で起きた自分に関するあまりよくない出来事を、親に言うのは少し気が引ける。「心配をかけたくない」とか「親に言ってもどうしようもない」と考える人もいるだろうし、実際に学校での心配ごとを相談してみても「そんなの気にすることじゃない」と流されてしまったことのある人もいるだろう。逆に、親に何か相談をして過剰な反応をされるのが嫌だという人もいる。親に学校での愚痴をこぼして、親が先生にそれを伝えてしまったら、学校生活がさらに気まずくなるかもしれない。
結果的に「居場所」の無さを感じた子どもたちが、渋谷などの繁華街をさまようことになったりします。そんな「難民高校生」たちが、危険な目にあったり犯罪にまきこまれそうになったりしながら必死にサバイバルする様子が、自身の体験談。そして友だちの体験談として語られます。
変わりたいと思っても変われない、抜け出したいと思っても抜け出せない。その理由は、こんなふうに書かれていました。
当時の私は、「もしここで変わったとしても、自分が変わっただけではどうせ今の状況は変わらない」と思っていた。実際、子どもがそういう状況に陥ってしまうのには、少なからず周囲の大人たちのあり方が影響している。となると、大人たちが変わらなければ子どもも変われないはずなのだが、多くの大人は「ああしなさい、こうしなさい」と子どもにばかり変わることを求める。そういう大人たちの態度が、素直になったり自分を変えたりできるタイミングやチャンスが来ることを心のどこかで願っている子どもたちに、その隙を与えない。
そんな仁藤夢乃さんが「居場所」を見つけることができたのは、予備校で農業体験のゼミを教える「阿蘇さん」という大人との出会いだったと語られます。もちろん、環境を変えるために高校中退という決断をした本人の意志力もあるでしょう。
しかし、ここまで読み進めた結果、子どもの気持ちに寄り添ってくれる大人の存在がいかに大切であり、欠かせないものであるということを実感させられます。
変わることのできた仁藤夢乃さんが、何かしたいと思っている若者達と、若者達の気持ちに応えて活動してくれる大人達を繋ぐ団体「Colabo」を立ち上げる話へと続き、本書は終わります。
最後に、仁藤夢乃さんから10代の若者へ向けて書かれた、幸せになるためのヒントを引用して、紹介させてください。
幸せになるための一つめのヒントは、嫌なことや苦しいことがあっても「環境のせいにしない強さ」だ。私は被災地の高校生たちと出会って、環境のせいにしないことの強さを知った。
読んでみたいと思った方。Kindleをお持ちでしたら、そちらの方が安く買えるようです。