本日は、キャラフレのユーザーさんから届いた質問や相談にお答えしてみたいと思います。
PN とある散歩道さん
キャラフレを開始しようと思ったきっかけはなんですか?
語りだすと長くなりそうな気がしますので、落ち着いた時に読んでください(笑)
元々興味があったのは記憶の上書き
私が子供時代空想好きだったことや、ゲームクリエイターを目指した理由は、連載の第2回と第3回に書きました。詳しくはそちらを読んで頂きたいのですが、簡単に整理すると私が一番興味を持ったのは、記憶の上書きです。つまり、青少年時代に満足できる体験を得られなかったり、辛い体験をした人でも、仮想的な体験でそれらの記憶を薄めることができる。それは小説でもアニメでも映画でも実現可能だと思っていますが、ゲームがもっとも適したツールだろうと考えたわけです。
ストーリーの終りはいつも寂しいから、エンディングの無いゲームを作りたい
私は、小説もアニメも映画も好きですが、なかでも長編もの、長期シリーズものが好きです。そして、どんなに長編であっても、いずれ訪れるストーリーの終りは、とても寂しいものです。キャラフレに至る前の私は、アドベンチャーゲームなどの企画開発をやっていたのですが、それらはどうしてもエンディングを用意して、エンディングに向かって開発していくものでした。運良くヒットしてシリーズ化することもありますが、決して無限ではありません。エンディングの無いゲームを作りたかったんです。
一度目のチャレンジ
エンディングの無いゲームを作るためには、パッケージ販売のゲームをシリーズ化するよりも、オンライン配信が理想です。一度目のチャレンジは、1999年頃に行いました。まだISDNが普及しはじめ、テレホーダイという深夜限定の定額通信だったころです。国内では時期尚早なのはわかってましたが、資本力の無い会社は先行逃げきりで勝負するしかありません。ADSLの普及が一歩進んでいた韓国とのプロジェクトや、少額課金の実験プロジェクト、セガの光ファイバーを使ったプロジェクトに参加したり、数年間いろいろな可能性を模索しましたが、結果的にはこのチャレンジは理想の実現には至りませんでした。
とある小説と出逢った
そういえば、この一度目のチャレンジをしていた頃、強く印象に残った作品との出会いがありました。私はオタクを自認していますが、今も昔もラノベは読みません。でも、たった一冊だけ本屋で見かけて、ふと買ってしまったラノベがありました。清涼院流水先生の『キャラねっと』という探偵小説です。
本当にたまたまの出会いでした。清涼院流水氏の名前も、後から大塚英志氏の評論本などで知りましたが、当時はまだ知りませんでした。表紙に惹かれたわけでもなく、中身を立ち読みしたわけでもなく、手にとってレジまで持っていってしまった偶然は、いま思っても不思議です。
その話の中心が学園を舞台にしたオンラインゲームだったのですが、その設定自体は特別斬新だったわけではないと思います。映画マトリクスが話題になってからしばらく経っており、仮想世界ものの作品は世の中に溢れていましたし、『キャラねっと』の仮想世界もバトルをしてレベルアップして…みたいなよくある設定でした。
でも、その本の中で一つ、ずっと頭に残って忘れられないことがありました。
主人公や主人公の姉、そしてクラスメイト含め子ども達はみんな、昼間学校へ通いながら、家に帰ったらオンラインのガッコウへ通っているのが当たり前。主人公が自分の部屋で仮想世界にログインして、姉が隣の部屋で同じ仮想世界にログインしているという日常風景。
その情景が、妙にリアリティをもって感じられたんです。自分が学生だったらそういう日常が絶対面白い!と。
子どもたちは、面白ければみんなやりますよね。クラスの誰かが、これ面白いよって言いながらやってれば、その友だちも当然やります。ドラクエだってそういうものでした。
その本との出会いからキャラフレの開発着手まで6年の歳月がかかるわけですが、近未来の子どもたちの日常風景は、ずっと頭に残っていました。
そして今、昼間学校に通いながら、夜にキャラフレを楽しんでくれる中高生の姿を実際に見ることができます。
ネット上に居場所があるべき
2000年代に入って、ひきこもりや鬱の増加などが社会問題になりはじめました。また、2008年に起きた『秋葉原無差別殺傷事件』などでは、犯人がネット掲示板に居場所を求め、拒否されたこともきっかけの一つとして報道されました。ネットの急速な普及とともに、人間関係をうまく構築できない若者の存在が浮き彫りになってきたと感じます。連載の中で「はじめに」でも触れましたが、人々はつながりを求めはじめ、つながりがうまく作れないことに戸惑いを感じているように思えました。
とくに、私もそうですが、現実世界にうまく居場所が作れないと感じる人たちは、ネット上に居場所を求めるのが当然の発想です。
キャラフレが、全ての人に心地よい居場所になるとは言い切れませんが、選択肢は一つでも多い方がいい。そんな思いで居場所の一つとなれる仮想空間を作りたいと考えます。この頃からやりたいことがストーリー重視からコミュニティ重視に変化し、様々な人々が様々な想いで集うことのできる仮想空間をイメージしはじめます。
コンシューマーゲームの仕事が一段落し時間ができた
2008年のリーマンショックの影響もあってか、2009年頃からコンシューマゲーム市場が一気に冷え込みはじめます。もともとゲームバブルのせいで、需要を上回る数の開発会社が参入しすぎたのでしょう。私の知り合いの会社もバタバタつぶれたり、ゲーム以外の業種へ変わっていきました。
それまでは目先の仕事に忙しく、新しいことを始める余裕はなかったのですが、私もめっきり暇になります。このままコンシューマゲーム業界にいても未来が無さそうなので、オンラインゲーム業界へ舵を切りなおすかと奮起。そして、2009年頃から約1年かけて、キャラフレの構想をまとめたのでした。